ユネスコの始まり
ユネスコの始まり
I 国連(国際連合:The United Nations)とユネスコ
ユネスコは国際連合の専門機関のひとつです。
したがって、ユネスコ活動の意義や理念は国連と同じです。ユネスコ活動を理解していただく前に、まず、なぜ国連が出来たのかを知っていただきたいと思います。
1 国際連盟(The League of Nations)の発足
20世紀、わたしたちは次の二度の世界大戦を経験しました。
1914年-1918年のヨーロッパを中心とした第一次世界大戦
1941年-1945年 のアジアにまで戦域が拡大した第二次世界大戦
おびただしい流血、命の損失、建物・自然環境の容赦なき破壊を残してそれぞれの大戦が終わった時、戦争のない平和な世界を築き、みんなが安心して暮らせる社会を、とひとびとは願いました。第一次大戦後の1920年には国際連盟(The League of Nations)が発足し、平和を守るための活動が始まりました。
2 国際知的協力委員会(The International Committee on Intellectual Cooperation)の設立
ユネスコの前身といえる機関が国際連盟の活動していた頃に、すでに発足していたことをご存知ですか。
1922年、新渡戸稲造氏が連盟の事務長補佐官を務めていました。新渡戸氏は、アインシュタイン(ドイツの物理学者)、キューリー夫人(フランスの物理学者)、タゴール(インドの詩人)をはじめ著名な人々を委員に、国際知的協力委員会(The International Committee on Intellectual Cooperation)を設立しました。このICICの活動は、第二次世界大戦の開戦により中断されてしまいました。
3 国際連合(The United Nations)の発足
二度目の大戦後、国際連盟は、国際連合(The United Nations)として、さらに強固な組織となり、今日に至っています。
4 国連憲章の前文
ユネスコは国連の一機関となりましたから、前述したように、国連発足の意義や理念の下に活動をしています。国際連合の基本的考え方は国連憲章の前文に次のように述べられています。
引用:
われら連合国の人民は、われらの一生のうちに二度まで言語に絶する悲哀を人類に与えた戦争の惨害から将来の世代を救い、基本的人権と人間の尊厳及び価値と男女及び大小各国の同権とに関する信念をあらためて確認し、正義と条約その他の国際法の源泉から生ずる義務の尊重とを維持することができる条件を確立し、一層大きな自由のなかで社会的進歩と生活水準の向上とを促進すること、並びに、このために、寛容を実行し、且つ、善良な隣人として互いに平和に生活し、国際の平和及び安全を維持するためにわれらの力を合わせ、共同の利益の場合を除く外は武力を用いないことを原則の受諾と方法の設定によって確保し、すべての人民の経済的及び社会的発達を促進するために国際機構を用いることを決意して、これらの目的を達成するために、われらの努力を結集することに決定した。
よって、われらの各自の政府は、サンフランシスコ市に会合し、全権委任状を示してそれが良好妥当であると認められた代表者を通じて、この国際連合憲章に同意したので、ここに国際連合という国際機関を設ける。
「国連憲章」が署名され、効力を発生したのは、1945年10月24日のことでした。
II ユネスコの設立
1.設立までの経緯
第一次世界大戦終結後に、ユネスコの前身といえる国際知的協力委員会が発足していたことはすでに述べた通りですが、第二次世界大戦の勃発で、中断したこの活動は、次のように復活いたしました。
第二次世界大戦後の昭和20年(1945)11月16日、イギリスとフランス両国政府の招集により、国際連合教育科学文化機関(The United Nations Educational Scientific and Cultural Organization = UNESCO =ユネスコ)設立のための会議がロンドンで開催され、ユネスコ憲章が採択されました。翌年11月4日、20ヵ国の批准によりユネスコ憲章が効力を発しユネスコが誕生しました。同月には第一回総会が開催されています。
2.ユネスコ憲章前文
この憲章の当事国政府は、その国民に代わって次の通り宣言する。
戦争は人の心の中で生まれるものであるから、ひとの心の中に平和のとりでを築かなければならない。
相互の風習と生活を知らないことは、人類の歴史を通じて世界の諸人民の間に疑惑と不信を起こした共通の原因であり、この疑惑と不信のために、諸人民の不一致があまりにもしばしば戦争となった。
ここに終わりを告げた恐るべき大戦争は、人間の尊厳・平等・相互の尊厳という民主主義の原理を否認し、これらの原理の代わりに、無知と偏見を通じて人間と人種の不平等という教義をひろめることによって可能にされた戦争であった。
文化の広い普及と正義・自由・平和のための人類の教育とは、人間の尊厳に欠くことのできないものであり、且つすべての国民が相互の援助及び関心の精神をもって果たさなければならない神聖な義務である。
政府の政治的及び経済的取極めのみに基く平和は、世界の諸人民の、一致した、しかも永続する誠実な支持を確保できる平和ではない。よって平和は、失われないためには、人類の知的及び精神的連帯の上に築かなければならない。
これらの理由によって、この憲章の当事国は、すべての人に教育の充分で平等な機会が与えられ、客観的真理が拘束を受けずに探求され、且つ、思想と知識が自由に交換されるべきことを信じて、その国民の間における伝達の方法を発展させおよび増加させること並びに相互に理解し及び相互の生活を一層真実に一層完全に知るためにこの伝達の方法を用いることに一致し及び決意している。
その結果、当事国は、世界の諸人民の教育、科学及び文化上の関係を通じて、国際連合の設立の目的であり、且つその憲章が宣言している国際平和と人類の共通の福祉という目的を促進するために、ここに国際連合教育科学文化機関を創設する。
3.ユネスコの一口メモ
1)ユネスコの旗
2)正式名称:the United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization
3)組織:国連専門機関
4)略称:UNESCO、ユネスコ
5)代表:オードレ・アズレ
6)活動の開始:1946年11月4日
7)本部:フランス・パリ